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  • て源のは宝の街に
    null「もちろんだ。香炉が自ら姿を消したということは、この館には、それを所有するのに相応しい人物がいなかったということではないのかな——それでは、我ら俗人が捜索に手を貸すのは徒労ということになるな、イル・モーロよ」  レオナルドは涼しげな顔で笑っている。  それを聞いたオルセオロたちが、う、と呻くような息を漏らした。  建築家の死をあくまでも奇跡と言い張るつもりならば、香炉の消失もまた、神の意志ということになる。そのことを、司祭たちは失念していたのだろう。  たとえ香炉が真に聖遺物だと認められても、それを失ってしまえば、彼らの評価があがることはない。むしろ大きな失態である。  うろたえる聖職者たちから目を背け、レオナルドは皮肉げにチェチリアを見上げた。 「アッラマーニは香炉を奪うために殺された——それはいいだろう、チェチリア。だが、彼はなぜ館の対岸にまで運ばれなければならなかったのだ?」 「それは——私たちの目を礼拝室から遠ざけるためではないのですか。香炉がなくなっていることを、すぐには気づかれないように、と」 「それはね、普通の泥棒の発想だよ、チェチリア」 「え?」  チェチリアが怪訝そうに眉を寄せた。レオナルドが笑う。 「その理屈でいけば、きみたちの目を屋敷の対岸に向けさせたのも、礼拝室の扉を施錠したのも、すべては時間を稼ぐためだということになる。逃げ出すためか、それとも盗んだ香炉を隠すために時間が必要だったのか——だけど、実際にはどうだった?」 「それは——」  チェチリアは息を呑んだまま固まっていた。 「夜が明けるよりも前にアッラマーニの遺体が発見され、その結果、きみたちは、この館から出ることができなくなった。礼拝室は見張られ、香炉を隠すことも流血の痕跡を消し去ることもできなくなった。それでは意味がないだろう」 「犯人は……香炉を奪うために、アッラマーニ殿を礼拝室で殺したのではないのですか——?」  さすがに不安げな口調で、チェチリアが訊いた。 「そんなことは知らないよ——まあ、正直に言えば、一つ二つ思いつくこともあるのだが」
    2015-02-07 16:45
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